
ハリーポッターやファンタスティックビシリーズなど、多くの物語に登場する永遠の生命をもたらすといわれる「賢者の石」。
賢者の石は、錬金術において「卑金属を金や銀に変える」「不老不死の霊薬を生み出す」とされる伝説の物質。
実在の書物や伝承において、賢者の石を作った人や作り方が詳しく記述されているものを5つ紹介します。
『エメラルド・タブレット』|賢者の石と作り方と作った人
【出典物】 『エメラルド・タブレット』(Emerald Tablet)
古代エジプト発祥とされる神秘的な碑文
【著者】 ヘルメス・トリスメギストス 伝説的な賢者
(Hermes Trismegistus)とされている
【発行年】正確な成立時期は不明(紀元前数世紀~8世紀頃)
概要
「上なるものは下なるもののごとし」の原理に基づき、物質変成の神秘を説いています。
12世紀にヨーロッパにラテン語訳が伝わり、錬金術の重要な書とされていたようです。
賢者の石の作り方
- 硫黄(Sulfur)と水銀(Mercury)の調和が重要
- 太陽(黄金)と月(銀)のエネルギーを取り込む
- 錬金術の大いなる業(Magnum Opus)を通じて変成
実際のレシピは抽象的ですが、「大いなる業」における四つの段階(黒化・白化・黄化・赤化)が記されています。
- 著者:ジャービル・イブン=ハイヤーン(Jabir ibn Hayyan, 721-815)
- 発行年:8世紀後半
- 概要:
- ジャービルはアッバース朝時代の錬金術師で、「錬金術の父」とも称される。
『ムスリム錬金術書』|賢者の石と作り方と作った人
【出典物】 『ムスリム錬金術書(リベラ・ルクロルム)』
【著者】ジャービル・イブン=ハイヤーン
アラビアのアッバース朝時代の錬金術師で「錬金術の父」とも称される。
硫黄・水銀理論を確立し、金属変成の方法を論じた。
【発行年】8世紀後半
著者のシリーズ「ジャービル文書」には、『リベラ・ルクロルム(Liber de Septuaginta)』と呼ばれる錬金術書が含まれています。
金属を変成する「エリクシル(elixir)」として賢者の石の製法が説かれています。
賢者の石の作り方
- 原料:水銀(Mercury)、硫黄(Sulfur)、塩(Salt)
- 一定の割合でこれらを混ぜ、長期間の加熱と冷却を繰り返す
- 変成の過程で「赤い粉末」が得られるとされる
- この粉末を鉛や銅に混ぜると金に変化
この方法は後世のヨーロッパ錬金術にも影響を与えました。
3.『黄金の花の秘密』|賢者の石と作り方と作った人
【出典物】 『黄金の花の秘密』
(太乙金華宗旨/The Secret of the Golden Flower)
【著者】呂洞賓
(Lü Dongbin, 8~9世紀の道士)
【発行年】17~18世紀頃(道教文献としての編集時期)
道教の錬丹術(内丹術)に基づく中国の書物。
精神的な「賢者の石(霊丹)」を作る方法です。
この伝承では、賢者の石=不老長生の道であり、物質ではなく自己修行の成果とされます。
1920年代にドイツの心理学者 リヒャルト・ヴィルヘルム によって英訳され、西洋にも影響を与えました。
賢者の石の作り方
- 精神の錬成を重視(外丹術=物理的な薬ではなく、内丹術=自己変革)
- 「金丹」(Jindan, Golden Elixir)を体内に生み出す
- 瞑想や気の循環により不老不死の境地に達する
『黄金のびんづめ』|賢者の石と作り方と作った人
【出典物】 黄金のびんづめ(Aurea Catena Homeri)
【著者】不詳(フリーメイソン系の錬金術師の著作ともいわれている)
【発行年】1723年(ドイツで出版)
- 著者:不詳(フリーメイソン系の錬金術師の著作とも)
- 発行年:1723年(ドイツで出版)
- 概要:
- 自然哲学と錬金術を統合する試みで、「宇宙の縮図」としての錬金術を述べる。
- 賢者の石の生成過程を「大いなる業(Magnum Opus)」の視点から説明。
- 18世紀のヨーロッパ錬金術の中で影響力を持った。
概要
黄金のびんづめでは、ドイツの錬金術書で、自然哲学と錬金術を統合する試みについて説明されています。
賢者の石は「宇宙の縮図(Microcosm)」とされます。
賢者の石の生成過程を「大いなる業(Magnum Opus)」の視点から説明。
この書物では、自然界のあらゆるものが錬金術の工程を経て賢者の石に変化するとされています。
18世紀のヨーロッパ錬金術の中で影響力がありました。
賢者の石の作り方
- 「第一物質(Prima Materia)」を探し出す
- 「賢者の卵」を作り、温める
- 「白の石」(銀を作る)→「赤の石」(金を作る)へと進化
- 特定の溶液に浸して徐々に完成させる
5. 『ニュートンの錬金術書』|賢者の石と作り方と作った人
【出典物】 『ニュートンの錬金術書』(Isaac Newton’s Alchemical Manuscripts)
【著者】アイザック・ニュートン(Isaac Newton, 1643-1727)
【発行年】17世紀末~18世紀初頭(生前未出版)
科学者アイザック・ニュートンは錬金術にも興味を持ち、その中で賢者の石を探求していました。
膨大な錬金術の研究ノートを残しており、その中には賢者の石に関する記述が残されていました。
「哲学の水銀(Philosophical Mercury)」の研究を進め、鉛の変成を試みていました。
ニュートンは化学的な視点から錬金術を解析し、近代化学の礎を築くことになりました。
1936年にサザビーズのオークションでニュートンの錬金術書が登場して、明らかになりました。
賢者の石の作り方
- 「哲学の水銀(Philosophical Mercury)」を精製
- 錬金術的変成を促す「賢者の火(Philosophical Fire)」を使用
- 鉛を金に変える方法について研究
ニコラス・フラメルの賢者の石については、こちらをご覧ください。
ハリーポッターの物語における賢者の石の設定はこちら。